中立と平和


国家や国民、個人の性格を考えるとき、その取り囲む自然環境を抜きに語ることは出来ません。
スイスは言わずと知れた山の国。国土の大半は険しい山岳地帯で、また美しい多くの湖に囲まれます。

山と湖の環境は優れた教育家を育てるという、興味深い考察があります。

スイスの誇る偉人と言えば、ペスタロッチ。
言わずと知れた現在の教育学の父とも仰がれるこの人物は、自らは決してエリートの教育を受けたわけではありません。
その彼が苦労して開いた学校の最初の教師は、ドイツ語の名詞が大文字で始まるという、日本語でいえば、あいうえおに当たるような基礎的なことさえ知らなかったと言います。
しかし彼の目指したものは、単なる知識にあふれた人間ではなく、優れた人間、幸福な人間を育てるという、教育の基本を見据えたものでした。

彼の深いヒューマニズムに基ずく考察は、人間の幸福の基本は少年少女の教育にあることを早くから喝破していたのです。
時はまさに、ヨーロッパナショナリズム勃興の時代。各国は国家に奉仕する人間を育てるべく、奔走していた時代です。
この自らの信念に妥協を許さぬ偉人の人間洞察が、いかに鋭く、先見性に溢れ、また尊いものであるかを理解するには、さらに時代を経ねばならないことでしょう。

スイスの中立は世界にほとんど類例のないもので、真似た国はあっても、それを成し遂げた国はありません。最近では戦後のオーストリアもそうですが、90年代に入り、NATOへの加盟、極右政権への国民の選択など、その中立概念が所詮、付け焼き刃にすぎなかったことを如実に示す結果となりました。

南米のスイスと言われる、私の憧れの国、コスタリカは内線渦巻く南米の中にあって、自ら軍隊を名目上廃止した世界最初の国です。
しかしこの美しい宝石のような国も、今日では埋蔵石油の発見とともに、経済、政治と大きく揺らいでいます。

スイスの独立と平和も、歴史的には決してきれいごとの上に守られたものではありませんが、ともかくも世界でもっとも悲惨な歴史を刻んできた欧州のただ中にあって、今日までそれを維持して来たのもまた、歴史的事実なのです。

ペスタロッチの信念に見られるような徹底した自主独立の精神。自衛以外の侵略戦争を行うことの非生産性への自覚、他民族国家を経営する上でもっとも重要な、中庸の精神と他者の独立への不干渉と権利の尊重。個人の権利の尊重と共同体への義務への自覚。
こういったものが、その独特な中立精神の礎であることは間違いありません。

この山々と湖の調和は、真に価値あるものは、決して戦争のような刹那的な解決ではなく、多くの時間と忍耐を経てはじめて成し遂げられる、矛盾の調和であることを教えているのかもしれません。 
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by schale21 | 2006-03-09 05:01 | 平和への構想 | Comments(5)
Commented by ありゃいん at 2006-03-09 22:18 x
schale21さんありがとうございます。
スイスの歴史って日本ではほとんど教えていないのではなかろうかと思います。歴史のエッセイと写真とを一緒に読んでいると妙に生々しく感じますね。ありがとうございます。

しかし、中立を守ってきた今、EU加盟するか否かにとても興味を持っています。私個人としては、ユーロは思っていたより強い通貨であることや実質国境が無くなることでスケールメリットが生まれるであろうと考えるので加盟しても良いのではないかと思うのですが、管理人さんはどのように思われるのでしょう。EU加盟によってスイスの何かが消えてしまうような気がしないでもありませんが・・・。

続く・・・
Commented by ありゃいん at 2006-03-09 22:18 x
(文字数があふれてしまったので二つに分割しました)

ところで時計を最近買いました。
スイスでOMEGAを・・・と思っていましたが、やはり10万円以上出すのは厳しいなと、、、清水の舞台から飛び降りました^^
実用性重視でCASIOのオシアナスという高級モデルを買ってみたのです。

これまで使ってきた安物とは違って多機能かつ高級感に富んでいるところがなかなかお気に入りです。まぁ、高級感といってもカシオはカシオですけどね。
しかし、これまで使ってきた安物時計、、、安物とはいえこいつと5年付き合ってから山を始めたので、槍ヶ岳や穂高、冬の浅間山や富士山も登ったんだなぁなどと思うと廃棄も出来ずどうしたモノかと...。

捨てる前にお祓いでもしてもらおうかな(笑)
Commented by schale21 at 2006-03-10 09:43
ありゃいんさん、有意義なご質問、ありがとうございます。
EU加盟については私は賛成とも、反対とも言えません。しかし現時点で投票権があるなら、反対するでしょう。
なぜならその未来がまだ不確定であるからです。
国家の超克ではなく超大国、新たな覇権国家になる可能性があります。またアメリカとの関係にもよります。
その点ではEUよりスイスの体制のほうがより信頼出来るからです。
実質的には現在でも加盟と変わりないとはいえ、将来的には主権の放棄に繋がる問題です。慎重にならざるを得ません。
ドルは近い将来さらに暴落するでしょう。これは自分が早くから予測していたことです。この時、必然的に激変が起こります。EUの性格もそのときより正確に見えてくると思います。スイスより日本が心配でなりません。
私はかなり独特な世界観、政治分析をしているので、公開の場で語るには限界があります。このぐらいでご容赦ください。笑 
いずれ個人的にお話する機会もあるかもしれません。

時計はそうですか、7ー8万円ぐらいですと、いいのが買えたんですが。私がお安く出来ましたので。笑

でも山ではカシオが一番便利です。信頼性抜群です。
Commented by ありゃいん at 2006-03-10 21:31 x
よく知りもせずにEU加盟について書いてしまいました。
やはり色々な意見はあるんですね。EUがうまくいっているように見えるので加入した方が良いだろうとおもっていた部分もあります。
スイス国民がどう考えているか興味がありますね。

ご相談しようかとも思ったのですが、何となく厚かましく思えたのでこちらで買ってしまいました。
しかし、、、やはりですね、OMEGAは欲しいです。
買えないとは思いつつも時計店は覗いていきますので^^

カシオの時計はPROTREKというタイプも持っていますが、今回のモデルの方がシンプルで良いです。時計もその時代と自分の好みで良いなぁと思うデザインが変わっていくようです。

たぶん暫く無いと思いますが購入時はよろしくお願いします。
Commented by schale21 at 2006-03-11 04:24
とんでもないです。こちらこそ好き勝手書いてます。国民の意見は半分半分ですね。まあ、今は急がなくても影響はないので、主権は残しておいた方がいいでしょう。
いつでもご相談ください、お待ちしてます。


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