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オレンジ

果実の丸い形象に 驚く時
数億年の生命の戦いを見る
それは長い長い 捨身と贈与への戦い

自らを贈らんとして得た 得難きその形姿
生命の奇跡  永遠の勝利の証
それは 誰人も奪う事の出来ない 真実の勝利

生命と心を継ぐとは かくも厳しき忍耐の戦い
私の命は 彼の捨身の成果であることを知る 
驚き 感謝 奇跡の中の奇跡

Schale

 

リルケはオレンジの丸い形に胸を打たれ、そこに長い長い自然の、贈与への意志の結晶を見て取ります。
それは、偉大な彫刻家、オーギュスト ロダンの秘書として働く中で、”見る”ことを学んだ詩人の洞察でした。
そこに、自らを贈ることによってのみ、その生命を継承できるという、深い、自然の摂理の体現を見たのです。

今日の経済学が、ただ簒奪のみに価値と規準を置くところにもまた、私たちの克服しがたい悲劇の根源があります。
しかし、全く新しい価値観は、もっとも古い人類の知恵にも通じ合います。

多くの古代の民族が、自然の中に優しい神々の姿を見たように、動物たちの、私たちを許す無限の忍耐がそうであるように、この世界を見る目そのものの転換こそ、私たちの唯一の生存の道なのかもしれません。
オレンジ_f0081988_7472236.jpg

by schale21 | 2006-03-31 07:54 | 詩と文学 | Comments(4)
Commented by kojiro-net at 2006-03-31 08:34
シャーレさんのおっしゃる「贈与」の意味が少し分かったような気がします。
このオレンジの存在感・・・いろいろなことを考えさせられますね。
Commented by schale21 at 2006-04-02 04:56
こじろうさん、写真はまさに見る目そのものに関わっていますね。
何気なく目にする日常の姿のなかに、永遠を見る詩人の洞察力に感嘆せざるを得ません。写真と詩が近いものであることを、最近ますます感じています。
Commented by おじゃまします at 2006-04-05 03:24 x
schaleさんのコメント、とても示唆に富んだもののように思いました
優れた詩人のように、優れた洞察力と想像力を身につけたいものですが、ついつい目先のものに鼻を伸ばしてしまうこのごろです(^^;
Commented by schale21 at 2006-04-07 22:13
おじゃましますさん、ありがとうございます。日本では詩人というとただ単に感傷的であったり、青白くか弱い青年を想像してしまいますが、古代では戦士のイメージが伴いました。またの本の戦国時代の武人もみな詩人でした。現代では哲学と文学、芸術はほぼ同義にちかいものではないでしょうか。私的なものの文学しかない日本では難しい問題ですね。



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