2006年 03月 10日 ( 1 )

ヨーロッパの統合、過去と未来

ヨーロッパが統合されたのは今日がはじめてではない。中世の時代にはローマ教会の権威のもと、全ヨーロッパは統一されていた。共通言語はラテン語である。

この問題を考えるには国家概念の推移を考えねばならない。

私たちが今日、自明のこととして納得しているものの多くを、私たちは太古の昔からそうであったと単純に信じている。
しかし本当にそうであろうか。

例えば、キリスト教徒とイスラム教徒、ユダヤ教徒は中東において、本当に何千年も前から妥協せぬ争いを続けていたのであろうか。
バルカン半島では、ずっと以前から民族間の激しい争いが、止む事無く続いていたのだろうか。
あるいは歴史は本当に進歩してきて、私たちが住む時代が最も進んだ時代なのだろうか。
そして歴史そのものの記述は、はたして信頼に足りうるものなのだろうか。

こういった迷信の多くは、時の権力を握るもののプロパガンダの成果にすぎないのではないだろうか。

国家の問題もまさにそうである。今日の概念での国家が生まれたのは、たかだか、この200あまりのことである。その直接の淵元はフランス革命と啓蒙思想である。

フランス国民軍を率いるナポレオンの軍団は、全ヨーロッパ連合軍を敵に回してなお無敵であった。
それはナポレオンの軍事的天才によるところが大きい。しかしより本質的な理由は彼の軍隊が、無名の庶民からなる国民軍であったことである。

軍事的訓練を充分に受けない、素人の軍団、しかし、その素人軍団は革命の理想と祖国を守るという熱血の意志に燃えていた。かれらは真に”フランス人”であり、フランスの概念と革命の理想を体現していたのである。同じ目的の達成のために死をも厭わない、内面からの団結の軍団。この軍団の前に、全ヨーロッパの諸候軍はなすすべもなかった。

この軍団の象徴こそナポレオンであった。ロシア遠征の敗退の際、はじめ数十万の軍勢が数千にまでなったとき、彼に従って、ついていったことを悔いるものはいなかったという。
凍結の川に橋を架け、仕事を成し遂げ、凍死する事を潔しとした。

諸国の軍隊はみな傭兵であり、彼らは職業として戦うのであって、理想を守る為に戦うのではない。
歴史にこのような例は多い。やはり革命の為に3倍の数の国王軍を破った、クロムウェル。
近くはレーニンの革命。中国赤軍による長征と革命の成功。ロシア赤軍のナチスに対する勝利(第二次大戦の連合軍の勝利の大半はソ連によってもたらされてもので、英米によるものではない。英米の貢献度はせいぜい20パーセント。これも一般的に誤解されている)これらはみな、軍事的奇跡である。

このフランス革命とフランス軍の勝利によって、歴史は大きく動くこととなった。
各国はフランスを真似て、徴兵制による、国民軍の創設に動きはじめ、また、国王ではなく、祖国に奉仕する人間の育成に励むようになったのである。いや、その前に”祖国”そのものを創設せねばならなかった。これが国家の誕生である。ドイツ統一のために献身したビスマルクはその象徴的存在である。

こうして、歴史は王族と貴族を中心とする、階級社会から、新たに考えだされた国家と言う概念を中心とする、より民主的な国民国家という方向に動き出した。

おしなべて、この民主的国家は、独裁国家よりも好戦的である点は注意して考える必要がある。ヒトラーの創設した、国家社会主義は、そのひとつの行き着く先で、民主主義の未来を象徴しているといってもよい。

今日のヨーロッパの統合は、この国家概念の超克への挑戦であるといえるかもしれない。

この緩やかな国家連合体、疑似国家は、人工国家の象徴である米国の最大のライバルである。その他のライバル、インド、中国、ロシアもいずれも他民族国家である。

小国スイスはやはり、他民族国家である。
今日EUが超克せねばならぬ多くの事を、経験として蓄積している。

近代国家概念の超克がEUの歴史的意義であるならば、スイスもその中立概念の一部を放棄せねばならぬ時が来ているといえるかもしれない。
そうではなく、新しい覇権国家の誕生であるならば、スイス国民の躊躇は故ある事となる。

国民投票の再度の否決にもかかわず、すでにスイスは事実上EUの一部である。
国連への参加は多くの人が賛同している。
それが是か非かは未来を担う私たち自身にかかっていることである。



Photo, Canon 1Ds, 一枚目、ベルン中央駅。EF24-70F2.8L
二枚目、EF50mmF1.4 、ベルン旧市街、時計塔
三枚目、EF70-200F4L、のみの市で演奏するバイオリン造りの若者たち。

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by schale21 | 2006-03-10 08:16 | 平和への構想 | Comments(3)